放っておくとまずい架空請求

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前回の続きで、個人情報が漏れている場合に放っておいてはまずい場合です。これは数年前に話題になりましたから、新聞などで読んでご存知の方も多いかと思いますが、私の知人で初耳だったという人もいますので、注意喚起はたびたび行う必要があるかと思います。

詐欺だと思っても、放っておいてはまずい場合

これはどういう場合なのかというと、簡単に言えば裁判所を利用した請求です。スマホやネットの問題ではなくて法律の問題になってしまいますが、一応基本なので押さえておきましょう。

例えばワンクリック詐欺にしてもそうですが、それを放っておいても、どこからか怖いお兄さんがやってきて、いきなり金払えと脅されるなんてことはないはずです。それは住所がわからないからというのもありますが、仮にこちらが払えないと尻をまくったら、相手は力づくで金を強奪することなど出来ないからです。そもそも日本は法治国家なのですから、自力救済は禁じられています。代金を回収する際にも、当事者で争いがある場合には、裁判所でお墨付き(判決)をもらってからにしなさいという理屈です。ワンクリック詐欺に引っかかってしまう人というのは、そこまでいかずに自分で最悪の選択をしてしまう人ですね。

ただ、裁判所の判決をもらえと言っても、代金を払えだの、貸した金を返せだのと言った日常茶飯事の問題を、いちいち全部裁判していたのではキリがありません。逆に、少額の代金や貸した金の返還請求をするのに、長い時間や高額の手数料がかかってしまうのでは、法律の意味もありません。そもそも代金請求や貸金返還請求に関しては、両者に金額等の争いがなくて、たんに債務者が支払いを滞らせているだけなら、ただちに判決や命令を出してしまって、あとはそれに則って回収しなさいとした方が、当事者のためでもあるし、国家のためでもあるわけです。

そういったものを実現するための法律が、「支払督促」や「少額訴訟」というものなんですが、簡単に利用できる分だけ、訴えられる側には不都合な部分もあるわけです。それが以下の場合。

裁判所の手続を悪用した架空請求等にご注意ください。


最近,支払督促や少額訴訟などの手続を悪用し,架空の請求について裁判所に申立てを行う事例があると報道されています。

 支払督促手続では,申立ての要件を満たしていれば,相手方の言い分を聞くことなく支払督促が発せられ,郵便によって送付されます。これを受けた相手方からの異議申立てがあって初めて請求が認められるのかどうかの審理をすることになりますので,支払督促の申立て段階では,それが架空請求であるかどうか,裁判所には分かりません。また,少額訴訟手続も同様に,裁判所に訴状が提出されても,その段階では架空請求であるのかどうか分からず,一定の要件を満たしていれば,提出された訴状等を相手方に郵便で送付することになり,相手方からの反論を待つことになります。

 そのため,裁判所から郵便物が送付されて来ているのに,身に覚えがないとしてそのまま放置してしまうと,架空の請求について判決などがなされ,強制執行を受けるようなことがあります。

 裁判所からの郵便物は必ず内容を確認し,不審な点があれば,記載されている電話番号がにせものでないか電話帳等で確かめた上で,裁判所に直接電話でお問い合わせください。送られてきた書面を裁判所に持参してもかまいません。

裁判所や裁判所の職員の名称等を勝手に利用した請求書等が送付される例も報道されています。不審な郵便物については,同じように裁判所にお問い合わせください。また,裁判所の職員が電話で金銭の支払いを指示することもありません。不審な電話については,警察に連絡するなどしてください。

 引用元:裁判所ウェブサイトー裁判所の手続を悪用した架空請求等にご注意ください。

要は、いちいち審理するのは面倒なんで、反論が無いなら、すぐさま判決を出しちゃうよという制度です。もちろん執行するのはその先なので、判決が出たらそれで終わりではありませんが、一旦判決が出てしまうと覆すのは難しいですから、しっかりとその段階で対処しないとなりません。つまり、放置してはいけないということです。

個人情報が漏れている場合には放っておいてはいけないと書きましたが、この場合なら住所ですね。裁判所が大事な通知を送るのに、相手に届いたかどうかわからないメールだのファックスだのというのは基本ありませんから、来る場合には当然郵送で来ます。それもペラペラの官製はがきとかアニメキャラの絵柄が入った封筒などの普通郵便でなんて事は絶対ありません。「特別送達」という重々しい内容でやって来ます。郵便を送るには基本住所が必要ですから、これが来るようなら、すでに住所はばれているということです。(大泉逸郎さんの場合には、「山形県 孫様」で郵便が届くという話もありますが、ややこしくなるので流していきましょう。)

もっとも、名前と住所くらいなら電話帳でもわかるだろうと思うかもしれません。確かにそうなんですが、詐欺師も闇雲に送っても成功する可能性は低いですし、何よりも自分の方が危険になる場合もあるわけです。ただ、相手の住所と名前がわかっていれば、簡単に訴えられることが出来るのがメリットでもあり、反対に架空請求でさえも簡単に出来てしまうのが、制度自体の大きな欠点でもあるわけです。

もし、送付されてきた時に架空請求だとわかっていれば、異議を提出する必要があります。面倒ですが、そういう制度です。それさえすればそれで終わりかというと、そうではないんですね。異議を提出すると今度は通常裁判に移行します。なんか余計に面倒に思えるかもしれませんが、架空請求である場合は、その時点で相手が訴えを取り下げるなりなんなりするでしょうから、それで終わりです。おそらく裁判所まで行く必要もないでしょう。もしも相手も戦う姿勢を見せたら?その時は裁判で半年くらい争いましょう。まあ、まずないと思いますが。

ただ、個人情報が漏れたからと言って、詐欺グループがそこまでしてくるかどうかはわかりません。それを脅しの手段として使う可能性はありますが、相手方も証拠を残すことになりますから、諸刃の剣だろうと思います。本来は、そこまで行く前に警察や消費者センターに相談するなどした方が良いでしょう。

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